大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福井地方裁判所 平成4年(わ)182号 判決 1993年5月24日

被告人

1

法人の名称 ユタカ株式会社

本店所在地

福井県坂井郡丸岡町長崎一四号一番地

代表者の氏名

柴田堅治

代表者の住居

福井県坂井郡丸岡町舟寄七八号三八番地

2

氏名 柴田堅治

年齢

昭和三年八月一日生

本籍・住居

福井県坂井郡丸岡町舟寄七八号三八番地

職業

会社役員

検察官

小泉昭

弁護人(私選)石本理

主文

被告人ユタカ株式会社を罰金二二〇〇万円に、被告人柴田堅治を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人柴田堅治に対し、この裁判が確定した日から三年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人ユタカ株式会社は、福井県坂井郡丸岡町長崎一四号一番地に本店を置き、レース生地の製造販売等を営み、被告人柴田堅治は、同会社の代表取締役として会社の業務全般を統括していたが、被告人柴田堅治は、ユタカ株式会社の業務に関し法人税を免れようと考え、架空仕入計上するなどの方法により、所得の一部を隠した上、

第一  昭和六二年三月一日から昭和六三年二月二九日までの事業年度のユタカ株式会社の実際の所得額が六三九三万二五八七円(別紙1修正損益計算書の当該事業年度分参照)で、これに対する法人税額が二五七六万二八〇〇円(別紙2脱税額計算書の当該事業年度分参照)であるのに、昭和六三年四月二七日、同坂井郡三国町錦三丁目三番一七号の三国税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三一九一万八七四九円で、これに対する法人税額が一二三一万六九〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、ユタカ株式会社の同事業年度の正規の法人税額と申告額との差額一三四四万五九〇〇円を免れ、

第二  昭和六三年三月一日から平成元年二月二八日までの事業年度のユタカ株式会社の実際の所得額が一億六〇二九万九六五九円(別紙1修正損益計算書の当該事業年度分参照)で、これに対する法人税額が六六一九万九三〇〇円(別紙2脱税額計算書の当該事業年度分参照)であるのに、平成元年四月二三日、前記三国税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五七四二万八二九六円で、これに対する法人税額が二二九九万三五〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、ユタカ株式会社の同事業年度の正規の法人税額と申告額との差額四三二〇万五八〇〇円を免れ、

第三  平成元年三月一日から平成二年二月二八日までの事業年度のユタカ株式会社の実際の所得額が一億四七四五万二〇〇六円(別紙1修正損益計算書の当該事業年度分参照)で、これに対する法人税額が六〇六五万九〇〇円(別紙2脱税額計算書の当該事業年度分参照)であるのに、平成二年四月二六日、前記三国税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六三〇一万七〇〇一円で、これに対する法人税額が二五一八万八二〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、ユタカ株式会社の同事業年度の正規の法人税額と申告額との差額三五四六万二七〇〇円を免れた。

(証拠)

全事実について

1  被告人の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書

(3)  大蔵事務官調書(検察官請求証拠番号乙一から六まで、八、一〇、一二、一三、一五から一八まで、二〇から三三まで、三五から三九まで、四一から四七まで)

2  柴田貴美子(前記番号甲一八三から一八六まで)、中田秀明(同一八七から一九五まで)、柴田隆行(同一九六から二〇〇まで)、松田高一(同二〇一から二一五まで)、中田寿子、鈴木恵子、増田廣(同二一八から二二一まで)、木内幹雄、赤星憲司(同二二三、二二四)柴田和代、戸田喜啓、中澤熊吉(同二二八から二三〇まで)、深堀博孝、井上馨、平井浩徳、林田栄太郎、谷口眞一、鈴木武志、北島信一、渡辺功、東謙治、津谷隆治、数馬国治、毛利富美子、柳原賢一の各大蔵事務官調書

3  査察官調査書(前記番号甲四、一六から四八まで、五一、五三から五六まで、七三から七六まで、八六から一〇九まで、一一一)

4  電話聴取書(前記番号甲二五七)

第一事実について

5  脱税計算書(前記番号甲一)

6  証明書(前記番号甲五、八)

第二事実について

7  脱税計算書(前記番号甲二)

8  証明書(前記番号甲六、九)

第三事実について

9  脱税計算書(前記番号甲三)

10  証明書(前記番号甲七、一〇)

(法令の適用)

1  被告人ユカタ株式会社

罰条 各事業年度につき法人税法一五九条一項、一六四条一項、情状により法人税法一五九条二項

併合罪加重 刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人柴田堅治

罰条 各事業年度につき法人税法一五九条一項

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条、一〇条

刑の執行猶予 刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は被告人両名の法人税法違反被告事件であるが、逋脱額の合計は九〇〇〇万円を超え、多額で、逋脱率も平均すると五八パーセントと低くない。逋脱の方法も、売上除外、架空仕入れ計上、原糸、原反の棚卸し除外、人件費の水増し等多岐にわたっている。動機も、会社の営業状態が悪くなったときに備えるというもので、特に有利には考慮できない。また、この種事犯が国家財政に損害を与えるとともに、真面目な納税意欲をそぐ危険の高いことは明らかであり、被告人両名、特に本件を中心になって行った被告人柴田の責任は重い。もっとも、本件は、被告人柴田が会社組織になる前に所有していた原反や個人で購入した原糸によって会社が得た利益からの回収を図ったという事情もあり、本税、加算税とも全て納付済みで、被告人柴田も本件を反省し、今後きちんとした納税を誓っていること、同種前科もないことなど、被告人両名につき有利な事情もあるので、これらを考慮し、主文の刑とし、被告人柴田については、刑の執行を猶予した。

(求刑 被告人ユカタ株式会社-罰金二七〇〇万円、被告人柴田堅治-懲役一年二か月)

(裁判官 安江勤)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書(製造原価内訳)

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書(製造原価内訳)

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書(製造原価内訳)

<省略>

別紙2

脱税額計算書

<省略>

脱税額計算書

<省略>

脱税額計算書

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例